≪episode 1: はじめに≫
こんにちは。井上智博です。『線香花火の科学』をテーマに、これから10回の配信を予定しています。よろしくお願いします。 私の記事は、線香花火って不思議だなぁと思っている人、あるいは、少しでもそう思ったことがある人を読者に 想定しています。
もともと私は、ロケットや人工衛星のエンジンの中で、液体燃料が小さな液滴に分裂する現象を調べています。 身の回りでは噴水や消臭スプレーから水滴ができるのと似ています。これまで高速度カメラを使って、液体の分裂現象を撮影してきました。
線香花火の科学に出会ったのは、2012年8月13日でした。当時在職していた東京大学で、高速度カメラを使った実験を行っていました。夏だったので、線香花火でも撮影してみるかと思い、池袋の東急ハンズに花火を買いに行きました。せっかくの機会ということで国産の線香花火を購入して大学に戻り、早速撮影しました。映像を見てびっくり。線香花火は、まさに液体の分裂現象でした。その日の夜に、線香花火の現象がどの程度明らかになっているか調べましたが、そもそも火花が飛び出す仕組みすらわかっていませんでした。ひょっとすると何かわかるかもしれないと思い、研究してみることにしました。 実は、そのとき撮影に使ったのが筒井時正玩具花火製造所の線香花火でした。箱の裏に書かれた住所を見ると、福岡県みやま市とあり、実家の近くでまたびっくり。 いろいろな偶然が重なって、線香花火の科学に興味を持つことになりました。
次回から本番です。線香花火の研究の歴史からスタートします。浮世絵や 19 世紀にフランスで描かれた線香花火の絵を紹介したいと思います。
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『線香花火の科学』目次
■ episode 1: はじめに
□ episode 2: 研究の歴史(第 1 回)
□ episode 3: 研究の歴史(第 2 回)
□ episode 4: 高速度可視化概要
□ episode 5: 火花が飛び出す仕組み
□ episode 6: 火花が枝分かれする仕組み
□ episode 7: 儚い色味の仕組み
□ episode 8: 線香花火の数式(第 1 回)
□ episode 9: 線香花火の数式(第 2 回)
□ episode10: おわりに
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